『ミッション:インポッシブル/フォールアウト(字幕・IMAX)』

TOHOシネマズ日比谷が入っている東京ミッドタウン日比谷案内板と、作品パンフレット。

原題:“Mission : Impossible - Fallout” / 原作:ブルース・ゲラー / 監督&脚本:クリストファー・マックァリー / 製作:J・J・エイブラムス、トム・クルーズ、クリストファー・マックァリー、ジェイク・マイヤーズ / 製作総指揮:デヴィッド・エリソン、ダナ・ゴールドバーグ、ドン・グレンジャー / 共同製作:トミー・ゴームリー / 撮影監督:ロブ・ハーディ / プロダクション・デザイナー:ピーター・ウェナム / 編集:エディ・ハミルトン / 衣装:ジェフリー・カーランド / スタント・コーディネーター:ウェイド・イーストウッド / 特殊効果スーパーヴァイザー:ニール・コーボールド / キャスティング:ミンディ・マリン、トビー・ウェール / 音楽:ローン・バルフ / 出演:トム・クルーズヘンリー・カヴィルヴィング・レイムスサイモン・ペッグレベッカ・ファーガソンショーン・ハリスアンジェラ・バセットヴァネッサ・カービーミシェル・モナハンウェス・ベントリーフレデリック・シュミット、リャン・ヤン、アレック・ボールドウィン / TCプロダクションズ/バッド・ロボット製作 / 配給:東和ピクチャーズ

2018年アメリカ作品 / 上映時間:2時間27分 / 日本語字幕:戸田奈津子

2018年8月3日日本公開

公式サイト : http://missionimpossible.jp/

TOHOシネマズ日比谷にて初見(2018/08/14)



[粗筋]

 極めて困難な任務を負う諜報組織IMFのエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)の今回の使命は、流出した3つのプルトニウムを奪還すること。金でテロを請け負う組織への流入が懸念されており、かつてイーサンが壊滅させた“シンジケート”の残党で形成される“アポストル(=神の使徒)の手に落ちれば、多くの都市が破壊されることか懸念された。

 ベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)、ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)とのチームで任務に就き、どうにか取引に介入してプルトニウムを回収する手前まで漕ぎつけたイーサンだったが、敵の手に落ちたルーサーを救ったことで、プルトニウムを奪われてしまった。

 すぐさま対策を講じ、奪われたプルトニウムの取引のために、“ジョン・ラーク”の名で知られる謎の男と、表向きは慈善事業家として知られながら闇で武器の取引をしている“ホワイト・ウィドウ”が接触することを嗅ぎつけたイーサンは、すぐさま取引が行われるパリへの潜入を計画する。

 しかし、前々から独断専行が頻繁であり、しかも今回の件に明らかな非のあるイーサンは、CIAによって警戒されていた。出発直前にエリカ・スローン長官(アンジェラ・バセット)が容喙し、部下のエージェントであるオーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を同行させるように命じる。不本意だが、イーサンは呑まざるを得なかった。

 トラブルに見舞われながらも、どうにか取引の舞台であるクラブに潜入したチームだったが、なおも想定外の事態は続くのだった――



[感想]

 続篇の制作権を自ら獲得したトム・クルーズが最初に『ミッション:インポッシブル』を発表してから、もう20年以上が経った。一時期は様々な要因からシリーズの終了や、新たな主人公へのバトンタッチも噂されていた(私の記憶では、次の主演に予定されていた俳優がそれを認めた、という報道さえあったはずだ)が、その瀬戸際でスタイルの確立と、配給側の納得する成績の達成を実現した。

 更に、『アウトロー』で初めてコンビを組んだクリストファー・マックァリー監督との相性の良さもあって、シリーズ最大の成功を収めた前作『〜ローグ・ネイション』から続投している。環境としては万全に近い態勢を整えた上で製作されたのが本篇である。

ミッション:インポッシブル”というタイトルに相応しく、非現実的なほど難易度の高いミッションを盛り込む一方、毎回のように、普通ならスター俳優に許されるものではない危険なスタントが話題となるこのシリーズだが、態勢が完璧に整った本篇では、従来を遥かに上回るレベルのスタントが用意された。

 CGによってどんな映像でも加工できるようになった昨今、わざわざスタントを用いる意味は薄れているようにも思えるが、そうでもない。如何に技術が向上しようと、CGでリアルに再現するにはそれだけ手間がかかるし、まだまだ限界はある。この作品ではそれを十分承知の上で、「これはCGでは絶対に無理だ」と実感させる、驚くべきシチュエーションを複数準備している。その映像の迫力を味わうためだけでも、わざわざ映画館に足を運ぶ価値は間違いなくある。

 他方で、ストーリーもスパイ映画らしく非常に入り組んだ作りとなっている。複数の組織や、それぞれに所属する人々の思惑、謀略が絡みあい、ボンヤリしていると事態が把握出来なくなるほどだ。アクションの面白さに集中させようと考えるなら、このあたりはもっと整理するべきで、人によってはそこを不満に感じる可能性はあるが、本篇は“スパイ映画”だ。入り乱れる謀略や複雑な駆け引き、それらが生み出す謎とカタルシスもまた、欠かせない要素だろう。もともと『ユージュアル・サスペクツ』の企みに満ちたシナリオで注目を浴びたマックァリー監督だけあって、複雑ながらも筋道は通っており堂々たるものだ。しかも、その複雑なプロットと高度なアクションがしっかり連携しており、謎や難易度の高いミッションの存在がアクションの緊迫感をよりいっそう高めている。

 加えて今回は、これまで以上に主人公イーサン・ハントの内面に踏み込んだシナリオとなっている。シリーズ旧作でも著しい裏切りに直面したり、恋人が窮地に陥ったり、組織そのものが崩壊状態となったり、とイーサンの新年を揺さぶるようなストーリーを展開してきたこのシリーズだが、本篇はとりわけ深刻だ――詳述は避けるが、いままで以上にイーサンの“正義”や“人間性”を問う物語となっている。シリーズ旧作での出来事も踏まえたクライマックスの人間関係とその展開、それらがもたらす動揺に、観客は目が離せなくなるはずだ。

 冒頭で、本篇が万全の態勢で製作された、と書いたが、ただ決して順調だったわけではない。撮影中、主演のトム・クルーズが、比較的軽いスタントシーンの撮影中に足を骨折する、というトラブルが発生している。撮影に復帰できるまでに9ヶ月は要する、と診断を受けるほどの大怪我だったそうだ。下手をすると作品自体が頓挫しかねない事態だったが、トムは懸命のリハビリを重ねた結果、予想を大幅に上回る速度で恢復、10週程度で完全に撮影復帰したという。回復力と、それを促した精神力にも恐れ入るが、彼の情熱に応え、撮影期間の短縮により条件が厳しさを増したなかでもここまで妥協のないクオリティを実現させたスタッフの尽力にも敬意を表したい。

 観た人ならお解りのはずだが、本篇はトム・クルーズ主演によるシリーズの総決算のような内容となっている。続けることも出来るが、このまま幕を下ろしても不思議のない決着だ。しかし、終了、継続、どちらに転がろうと、現時点で本篇がシリーズを代表する作品であり、アクション映画の金字塔のひとつとなったことは揺るがない。

 もっと続いて欲しい、と言いたいのはやまやまだが、こんなものをずっと作り続けていたら、いずれトムは撮影中に帰らぬ人となってしまうだろう。悩ましいところである。



関連作品:

M:i:III』/『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』/『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

誘拐犯』/『アウトロー(2012)』/『ワルキューレ

オール・ユー・ニード・イズ・キル』/『マン・オブ・スティール』/『ピラニア リターンズ』/『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』/『グレイテスト・ショーマン』/『NY心霊捜査官』/『Black & White/ブラック & ホワイト』/『ミッション:8ミニッツ』/『ゴーストライダー』/『私の中のあなた

007/スカイフォール』/『ボーン・アルティメイタム』/『キングスマン』/『ワイルド・スピード SKY MISSION