『寄生獣』

寄生獣 Blu-ray 通常版

原作:岩明均(講談社・刊) / 監督&VFX:山崎貴 / 脚本:古沢良太山崎貴 / 製作:市川南、中山良夫 / 撮影:阿藤正一 / 照明:高倉進 / 美術:村田裕至、佐久嶋依里 / キャラクターヴィジュアル・ディレクター:柘植伊佐夫 / 編集:穗垣順之助 / VFXディレクター:渋谷紀世子 / キャスティング:緒方慶子 / 音楽:佐藤直紀 / 主題歌:BUMP OF CHICKEN『パレード』(TOY'S FACTORY) / 出演:染谷将太深津絵里橋本愛東出昌大池内万作、オクイシュージ、山中崇岩井秀人佐伯新春木みさよ田島令子須永慶螢雪次朗山谷花純山中秀樹望月理恵桜井ユキ、奥野瑛太、武田一馬、池谷のぶえ、牟田浩二、大森南朋余貴美子豊原功補北村一輝國村隼浅野忠信 / 声の出演:阿部サダヲ / 配給&映像ソフト発売元:東宝

2014年日本作品 / 上映時間:1時間49分 / PG12

2014年11月29日日本公開

2015年4月29日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video通常盤:amazon|DVD Video豪華版:amazonBlu-ray Disc通常盤:amazonBlu-ray Disc豪華版:amazon]

公式サイト : http://kiseiju.com/ ※閉鎖済

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2014/12/19)



[粗筋]

 その夜、イヤフォンをつけて音楽を聴いていた泉新一(染谷将太)は、部屋に現れた小さな蛇のような生き物に驚いた。それは新一の右手の皮膚から体内に入り込むが、新一は右腕を縛り、それ以上の侵入を食い止めた。

 翌る日から、新一は右手に違和感を覚えはじめた。本人の意志を無視して幼なじみの村野里美(橋本愛)の身体を撫でまわすし、手の届かないところに落ちたはずのものが簡単に拾えてしまう。家に帰ったあとで、試しにカッターで右手に傷をつけようとすると、新一の右手は突然、変形した。

“右手”は新一の動揺をよそに、急速に知識を吸収し、能弁に語りはじめる。いわく、“右手”は寄生生物であり、本来は脳を食って肉体のコントロールを奪うはずだったが、侵入を阻止されたため、右腕を食って寄生するほかなかった。自らをミギー(阿部サダヲ)と名付けたその寄生生物は、自らを理解するべく、貪欲に知識を吸収するのだった。

 高校からの帰り、ミギーは突如、「同族の気配がする」と言い出した。導かれるまま、中華料理店に潜入した新一は、そこで店主らしき格好をした男が、変形させた頭で人間を食らっているところに遭遇する。殺されかかった新一だが、すんでのところでミギーに救われた。

 どうやら、近ごろ相次いで発生していた惨殺事件は、脳を食った“寄生生物”が起こしていたらしい。新一は知らせるべきか悩むが、ミギーは「実験台にされるぞ」とあっさり却下するのだった。

 同じ頃、新一の通う高校に、休職した教師の代理として、田宮良子(深津絵里)という女性が赴任してくる。すぐにミギーは悟った――彼女が“同類”だ、と。

 対する良子も、ミギーが“同類”であることはすぐに勘づいていた。恐る恐る接近する新一に、しかし良子は敵意を見せず、それどころか対話を要求する。

 連れて行かれた水族館で、新一が引き合わされたのは、更にふたりの寄生された人間だった。そして彼らは、驚くべき話をする――社会には既に多くの寄生された人間がおり、生き延びるためにネットワークを形成している、というのだ――



[感想]

 恐らく、日本の漫画の中でも特に映像化が待たれていた1本であろう。かなり早い段階でハリウッドも目をつけ、映画化に向けての動きがしばしば好事家のあいだで話題となっていたが、そちらは形とならず、権利が空いたことでようやく日本での映画化が実現した。

 実はこの原作、ある時期まで、『呪怨』シリーズの清水崇監督が映画化を手懸けるはずだったらしい。ハリウッドでの映画化の話が不調に終わる前か、日本での映画化が決まったあとなのか、は把握していないが、けっきょくこうしたVFXの必要な大作に慣れている山崎貴監督が手懸ける運びとなった。

 恐らく近年の映画界で、これほど多くのVFXを採り入れた大作をコントロール出来る経験の豊富な監督は限られてくる。なかでも、自らVFXを手懸け、メガヒットも放っている山崎貴監督は、選ぶ側からすれば無難なラインであろうし、実際適任ではある――ただ、原作の評価の高さ、多彩な魅力を思うと、無難すぎたように思えてならない。

 残念なのは、VFXを多用した猟奇的描写がふんだんにある一方で、その残酷なヴィジュアルがもたらす緊張感があまり演出出来ていない点だ。その瞬間を見せるために間を多く設けたり、表現上の伏瀬や影響をちりばめる、といった工夫がもうひとつ乏しい。決して工夫が皆無というわけではないのだが、この設定、物語のポテンシャルは充分に発揮出来ていないように思う。

 ただ、ドラマ部分の表現はストレートながら丁寧だ。陸続と発生する凄惨な殺人事件に絡む描写をちりばめつつ、主人公・新一とミギーとの交流をユーモラスに描いて緩急を生む。しかし両者が交わり、追い詰められていくにつれ新一が変貌していくさまを、本篇はうまく汲み取っている。

 その点、期待を背負った大作だけあって、役者が粒揃いであることが奏功している。若手ながら既に評価の高い染谷将太が、普通の少年から次第に闇を帯び、人間離れした鬼気を放つさまを巧みに体現しているし、そんな彼を翻弄する“寄生生物”たちを演じる深津絵里東出昌大らも、微妙に異なる“違和感”を表現して、彼らならではの個性をまとっている。“寄生生物”たちが際立っていればこそ、新一の変化も伝わりやすい。

 何より、これだけ奇想に優れ、悽愴なヴィジュアルが展開する作品ながら、本篇はテーマ性も高い。人間を捕食する知的生物という観点から人間の営みにある欺瞞や業を露わにする一方で、新一や“寄生生物”の良子を軸に、謎めいて深い母子の絆をも描き出す。尺の長い原作を前後篇で映画化するにあたって、適切に題材を抽出して、区切りをつけた印象だ。

 VFXのクオリティ、俳優の演技、シナリオの構成と、それぞれを採り上げればレベルは高い。ただ、そのわりに、少々綺麗にまとまり過ぎたように感じるのだ。良くも悪くも“お行儀がいい”。

 ほかならぬ山崎貴監督が主導して高めてきた日本のVFXの水準が上がったことが窺える一方で、山崎貴という監督の優等生的であるがゆえの弱さも露呈している作品であるように思う。伝説的な作品の映画化としては妥当に作られているだけに、もっと突き抜けられたのではないか、と個人的には惜しまれてならない。



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