恐怖箱 残念

恐怖箱 残念 『恐怖箱 残念』

加藤一、雨宮淳司、高田公太


判型:文庫判

レーベル : ケケ書房文庫

版元:ケケ書房

発行:2010年6月31日

isbn:97848124xxxxx

本体価格:573円

商品ページ:[検索出来ず]

 近年『超−1』出身の怪談作家たちが絶え間なく新作をリリースしているが、本書はその中でも屈指の“奇書”に類するものだろう。

 本書に収録されているのは、『「超」怖い話』や他の『恐怖箱』なら間違いなくボツにされているようなエピソードばかりだ。何となく妙なんだが具体的な異変は起こらず有耶無耶に片付けられる話、体験者がもっと深刻な顛末を窺わせる思わせぶりな形で先送りにしたのにあっさりと決着のついてしまった話などなど、非常に生煮え感の強い談話――文字通り“残念”と言わざるを得ないものばかりが収録されている。

 書いている側も、「本当にこの終わり方で発表していいのか」「もういちど取材し直した方がいいんじゃないのか」と迷いながら書いているのが窺えて、いずれも怪談の語り口は充分に磨き上げているはずなのに、やけに描写が煮え切らない。その悶々とした筆致のために、読む側もいつも以上に早くページを繰ってしまう。もっとガツンと来る話はないのか、じんわりと染み通るような恐怖を味わわせてはくれないのか、と懸命に文章を追うが、執筆者の感じているもどかしさに共鳴するばかりで終わってしまう。

 残念なのは内容だけではない。帯にも裏表紙側のカバーにも“十六話”と明記されているのに、実際は十五話しか収録していない。あとがきで軽く触れた話がもしかしたらもともと十六話目の予定だったのかも知れない。そもそもこのあとがきは本当にあとがきだったのだろうか。書き方からして、こちらがまえがきで、巻頭に据えられているのがあとがきだったように思えるのだが。新人発掘のためにシリーズのほとんどの書籍に入れている『超−1』の告知を省いてまで詰めこんでいるのに、どうしてこうなってしまったのか。ここまで残念目白押しなのに、私の見たところ誤字脱字がひとつもないのが余計に切なさを掻き立てる。

 清々しいばかりに残念尽くしであり、こんなものを喜んで読むのはもはや病膏肓に入った真性の怪談ジャンキーだけであろう。嗚呼勿体ない勿体ない、と唸りながら読み進むのが快感に思えたなら、きっと貴方はもう戻れない領域に踏み込んでいる。



 ちなみに本書、どういうわけか発売前に公式サイトでもメールマガジンでも告知されなかった。それでも筆者は比較的早く情報を入手出来たほうだったはずだが、ネット書店ではいっさい検索に引っ掛からず、店頭を探しても見つからない。だいぶ経って、新刊なのに棚差しにされていたことに気づいてようやく購入することが出来た。入荷数が少なかったからなのか、何らかの理由で書店員の方が平台にすることを厭ったのかは不明だが、書店で探す際には留意されたい。

 斯様に、購入に至るまでの経緯でさえ残念な有様だった。もし、どうやって探しても発見出来なかったのなら――縁がなかったのだと諦めた方が、貴方自身のためかも知れない。



 ……だって実際には発売されてないし。