shortstory

Love or Die

放課後、プリントの整理を任され、黙々と手を動かしていたとき。 「チョコに毒を入れてプレゼントする女の子って、いるかね」 波奈のそのひと言に、陸はしばし絶句した。 「……恨んでる相手に、恋してるふうを装って、チョコをあげんの?」 「本気で憎いなら…

めがねっ娘地獄変

実家暮らしを続ける限り彼女は出来ない、という結論に至り、遂に若林はアパートを借りる意を固めた。生活の余裕を保てる範囲で居を固めよう、となれば、多少の怪しさには目を瞑るしかない。 お約束ではあるが、そこは非常識なくらい賃料の安い部屋だった。案…

それぞれのシネマ

人生の大半を、光を失った状態で過ごしてきた祖父の趣味は、映画鑑賞だった。 「映画、と言っても、何も愉しむのは映像だけじゃないよ。台詞、音響、音楽――聴く面白さもある」 昔はミュージカル映画に、荘重なオーケストラを導入した作品など、音楽に魅力が…

属性:委員長

「うちの教室、委員長の幽霊が出んだよ」 「……別に死んだことないよな、お前のクラスの学級委員長」 「酷いこと言うなよ。うちの委員長は二年間、不動だぞ」 「それはそれで問題あるんジャマイカ」 「生前どういう肩書だったのかは解らねぇけど、うちのクラ…

メイドカフェ再襲撃

「ステージの隅っこのほうから、焦げ臭い匂いがしてくるんです」 舞美さんがそう話すと、千波さんは眉をひそめた。やっぱり黙っていたほうが良かったかな、と舞美さんは一瞬後悔した。 彼女たちが勤めるメイドカフェでは連日イベントが開催されており、その…

突発掌篇『嵐の日の迎え火』

夕方、買い出しついでに散歩している途中、玄関先で迎え火を焚いている家族を見かけた。 いまどき都内で普通にこんな光景を見かけるのはこの界隈ぐらいだろうな、とほのぼのしながら、視線を上げると、暗い空で僅かに亀裂を開けた雲が真っ赤に燃えている。こ…

Part02―拗ねる理由

「今日バイトの人まだ来ないから大変だよ〜」 中東系の人らしいマスターが異様に発音の確かな日本語でぼやきながら、手当たり次第に料理をばらまいていく。 「お兄ちゃん、働いてけば? お小遣い足りないんでしょ?」 「厭だよ。忙しすぎて頭が変になりそう…

Part01―失せもの

新年早々、妹が慌ただしく買い物に出かけていった。どこまで? と訊いても「ちょっとだけ〜〜」としか応えず、玄関先でスキップを踏むように靴を履いて家を飛び出す。 これ幸いとばかりにリビングのテレビを占領して、昼過ぎまで目が腐りそうなほどゲーム三…